施工体制台帳は、元請が「この現場に誰が入って、どの会社がどの工事を請け負っているか」を1冊にまとめる書類です。書く項目が多く、下請からの書類が揃わないと完成しないため、現場が動き出してから慌てる会社が少なくありません。この記事では、一人親方・建築業・職人さんの事務代行を行っているマッセが、施工体制台帳の記載項目を欄ごとに、添付書類を種類ごとに整理し、作成から保存までの流れを順番に説明します。施工体制台帳が何かという基本は施工体制台帳とは?作成義務・記載内容・保存期間でも触れていますので、ここでは実際に書くときの手元の資料として使える内容に絞ります。
施工体制台帳を作る前に確認すること

書き始める前に、そもそも自社の工事で作成が必要かどうか、誰が作るのか、何を集めるのかをはっきりさせておくと、途中で手が止まりません。
作成が必要になる工事の基準
施工体制台帳の作成義務は建設業法第24条の8に定められています。対象は、発注者から直接工事を請け負った建設業者(元請)が下請契約を結ぶ場合で、公共工事と民間工事で基準が違います。
| 工事の区分 | 作成が必要になる条件 |
|---|---|
| 公共工事 | 下請契約を結んだ場合は、金額に関係なく作成(公共工事入札契約適正化法) |
| 民間工事 | 特定建設業者が結んだ下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の場合に作成 |
民間工事の金額は、令和5年1月1日以降に契約した工事から現在の基準になっています。それより前の資料には4,000万円(建築一式6,000万円)と書かれたものが残っているので、古い社内マニュアルを使い回している場合は注意してください。下請契約が複数あるときは合計額で判定します。
作るのは元請、材料を出すのは下請
施工体制台帳を作成する義務を負うのは元請です。ただし、台帳の中身の大半は下請各社の情報なので、下請が再下請負通知書や作業員名簿を出さなければ台帳は完成しません。元請の担当者がやる仕事は「書く」というより「集めて綴じる」が実態で、下請の立場で見ると「元請の台帳のために自社分の書類を期日までに出す」のが仕事になります。どちらの立場で読んでいるかで、この記事の使い方が変わります。
台帳の様式は決まっていない
法律が決めているのは記載事項と添付書類であって、様式そのものではありません。実務では全建統一様式の施工体制台帳が広く使われており、グリーンサイトやBuildee(ビルディー)を採用している元請は、下請が入力した情報からシステム上で台帳を出力します。紙でもシステムでも、埋めるべき項目は同じです。システムでの出力手順はグリーンサイトで施工体制台帳を出力する方法とビルディーと施工体制台帳の関係をご覧ください。
記載項目の全体像|台帳は3つのかたまりでできている
施工体制台帳の記載事項は建設業法施行規則第14条の2に列挙されています。欄が多く見えますが、整理すると「元請自身のこと」「下請ごとのこと」「添付する書類」の3つに分かれます。先に全体像を押さえてから、欄ごとに見ていきます。
| かたまり | 主な内容 | 情報の出どころ |
|---|---|---|
| 元請に関する事項 | 許可、工事の概要、発注者、技術者、保険加入状況 | 元請の社内資料・契約書 |
| 下請に関する事項 | 下請ごとの会社情報、請け負った工事、技術者、保険加入状況、作業員名簿 | 各下請からの再下請負通知書・作業員名簿 |
| 添付書類 | 契約書の写し、技術者の資格と雇用関係の証明 | 元請と各下請 |
元請に関する欄の書き方

元請自身に関する欄は、契約書と許可通知書、技術者の資格証があれば埋まります。ここは一度作れば次の現場でも流用できる部分なので、社内のひな形に入れておくと早いです。
建設業の許可|業種と許可番号を許可通知書どおりに
元請が受けている建設業許可の業種と許可番号、許可年月日を書きます。複数の業種で許可を受けている場合は、その工事に関係する業種をすべて書くのが基本です。許可番号は「国土交通大臣許可(特-○)第○○号」「○○県知事許可(般-○)第○○号」のように、特定か一般か、更新回数を表すかっこ内の数字まで正確に写します。更新のたびにかっこ内の数字が変わるので、古いひな形の数字が残っていないか確認してください。
工事の名称・内容・工期|契約書の表記に合わせる
工事名称は発注者との契約書に書かれた正式名称をそのまま使います。社内で使っている略称を書くと、添付した契約書の写しと一致せず指摘を受けます。工事内容は「○○ビル新築工事のうち内装仕上工事」のように、何をどこまで行うかが分かる書き方にします。工期は契約書の着工日と完成日です。
発注者と契約日|監督員がいるときは名前と権限も
発注者の名称と住所、契約を結んだ年月日を書きます。発注者が監督員を置いている場合は、監督員の氏名と、その監督員にどこまでの権限があるか(設計変更の承認ができるのか、立会いのみかなど)も記載します。この権限の内容は契約書や発注者からの通知に書かれているので、その文言を引用する形で問題ありません。
現場代理人・監理技術者・主任技術者|資格と専任の別
現場代理人を置く場合はその氏名と権限、監理技術者または主任技術者の氏名と、その人がどの資格や実務経験で技術者になっているか、専任か非専任かを書きます。監理技術者を置く工事では監理技術者資格者証の番号も控えておきます。技術者ごとに「資格を証明する書類の写し」と「元請との雇用関係を証明する書類の写し」を添付する必要があるので、この欄を書く時点で写しも一緒に用意しておくと後で探さずに済みます。
専門技術者|置いたときだけ書く
元請が自社で施工する部分のうち、主任技術者の資格の範囲に入らない専門工事がある場合は、その工事に専門技術者を置き、氏名・資格・担当する工事の内容を書きます。該当しなければ空欄か「該当なし」です。
健康保険等の加入状況|事業所ごとに加入・未加入・適用除外
健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、元請の営業所と工事現場それぞれの加入状況を書きます。加入している場合は事業所整理記号や事業所番号を書く欄が全建統一様式にありますが、個人の被保険者番号を書く欄ではないので混同しないでください。法人なら原則すべて加入が前提で、未加入のまま提出すると元請は発注者や行政から指導を受けます。
外国人技能実習生・一号特定技能外国人の従事の状況
その工事に外国人技能実習生や一号特定技能外国人が従事するかどうか(有・無)を書きます。該当者がいる場合は、別途、受け入れに関する書類の提出を元請から求められるのが通常です。
下請ごとの欄の書き方|再下請負通知書から転記する

下請に関する欄は、一次下請だけでなく、二次・三次と続くすべての下請について書きます。情報源は各下請から出てくる再下請負通知書で、元請はその内容を台帳に転記(またはそのまま綴じ込み)します。下請の立場では、ここに書かれる内容を自分の再下請負通知書に正確に書いておけばよい、ということです。
商号・住所・許可|許可がない下請は「許可なし」と明記
下請の商号または名称、住所、建設業許可の業種と番号を書きます。500万円未満の軽微な工事だけを請け負う下請は許可を持っていないことがあり、その場合は許可番号欄を空欄にせず「許可なし」と分かるようにします。空欄のままだと「書き忘れ」と「許可なし」の区別がつかず、確認の往復が増えます。
請け負った工事の名称・内容・工期・契約日
その下請が請け負った工事の名称と内容、工期、注文者との契約年月日を書きます。工事名称は元請の工事名称と揃え、内容は「うち鉄筋工事」のように担当範囲を添えます。工期は下請契約書の工期であって、元請の全体工期ではありません。ここを元請工期で書いてしまう間違いが多いので、下請契約書の日付を見て書きます。
下請の現場代理人・主任技術者・専門技術者
下請が現場代理人を置く場合はその氏名と権限、主任技術者の氏名と資格の根拠、専任か非専任かを書きます。下請の主任技術者についても、資格を証明する書類と雇用関係を証明する書類の写しが必要になるため、再下請負通知書と一緒に出してもらいます。一人親方が請負で入る場合は本人が主任技術者になるのが通常で、資格がなければ実務経験で要件を満たしているかを確認します。
下請の健康保険等の加入状況
下請ごとに、健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況を書きます。一人親方は厚生年金と雇用保険が適用除外、法人は原則加入、個人事業で従業員5人未満なら健康保険・厚生年金は適用除外(国民健康保険・国民年金)というのが基本の整理です。「未加入」と「適用除外」は意味が違うので、該当しない保険は適用除外と書き、未加入の会社だけが未加入になります。
作業員名簿|令和2年10月から台帳の記載事項に
令和2年10月1日以降に契約した工事から、下請ごとの作業員名簿(氏名・生年月日・職種・保険加入状況・中小企業退職金共済の加入・安全衛生教育・資格など)が施工体制台帳の記載事項に加わっています。実務では各下請が作業員名簿を提出し、元請がそれを台帳に綴じ込む形です。名簿の項目ごとの書き方は作業員名簿の書き方と記入例にまとめています。
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添付書類の一覧|写しを揃える順番

記載事項と並んで法令で決まっているのが添付書類です。「書いたけれど写しが付いていない」が差し戻しの定番なので、表にして一つずつ確認してください。
| 添付書類 | 誰の分か | 用意する人 |
|---|---|---|
| 発注者との契約書の写し | 元請 | 元請 |
| 下請契約書の写し(注文書・請書でも可) | 一次以下すべての下請契約 | 元請(一次分)、各下請(再下請分) |
| 監理技術者・主任技術者の資格を証明する書類の写し | 元請の技術者 | 元請 |
| 同技術者の雇用関係を証明する書類の写し | 元請の技術者 | 元請 |
| 専門技術者の資格・雇用関係の証明(置いた場合) | 元請 | 元請 |
| 下請の主任技術者の資格・雇用関係の証明 | 各下請 | 各下請 |
| 再下請負通知書 | 再下請負をした各下請 | 各下請 |
| 作業員名簿 | 各下請 | 各下請 |
契約書の写し|注文書と請書の組み合わせでもよい
契約書を正式に取り交わしていない場合でも、注文書と注文請書の写しがあれば契約書の写しとして扱えます。見積書だけでは契約の証明になりません。契約書に金額が入っていることを理由に下請が写しを出し渋ることがありますが、法令上の添付書類なので省略はできません。元請によっては金額欄を伏せた写しで受け付けるところもあるため、気になる場合は先に相談します。
技術者の資格証明|合格証・免許証・実務経験の証明
施工管理技士の合格証明書、技能士の合格証、監理技術者資格者証などの写しです。資格ではなく実務経験で主任技術者になっている場合は、実務経験の内容と年数を証明する書類(経歴書や過去の契約書など、元請が指定する形式)が必要です。
雇用関係の証明|健康保険証の写しは番号を隠す
技術者がその会社に直接雇用されていることを示す書類で、健康保険の被保険者証や標準報酬決定通知書、住民税の特別徴収税額通知書などの写しが使われてきました。健康保険証の写しを使うときは、記号・番号・保険者番号の部分を隠して提出するのが原則です。従来の健康保険証は新規発行が終わり、資格確認書やマイナ保険証への移行が進んでいるため、元請がどの書類で受け付けるかを先に確認しておくと手戻りがありません。
作成から保存までの流れ|6つのステップ
施工体制台帳は作って終わりではなく、現場に置き、変更のたびに直し、工事が終わっても保存します。流れをステップで整理します。
ステップ1|下請契約の締結と同時に書類を依頼する
一次下請と契約を結んだら、その時点で再下請負通知書・作業員名簿・技術者の証明書類の提出を依頼します。現場が始まってから依頼すると、入場日に間に合いません。依頼時に提出期限と提出方法(紙・メール・グリーンサイトなど)を明示しておくと回収が早くなります。
ステップ2|元請分の欄を先に埋める
下請の書類を待っている間に、元請自身の欄と添付書類を仕上げます。ここは自社の資料だけで完結するので、待ち時間を使って終わらせておきます。
ステップ3|下請から届いた書類を確認して綴じ込む
届いた再下請負通知書と作業員名簿を、記載漏れ・契約書との不一致・写しの添付有無の3点で確認し、台帳に綴じます。二次・三次の分は一次下請を経由して届くのが通常なので、一次下請に「下の分まで揃えて出す」ことを伝えておきます。
ステップ4|施工体系図を作って掲示する
台帳をもとに、各下請の分担関係を1枚の図にした施工体系図を作り、工事関係者が見やすい場所(公共工事では加えて公衆が見やすい場所)に掲示します。作り方は施工体系図の書き方をご覧ください。
ステップ5|現場に備え置き、公共工事は写しを発注者へ
完成した台帳は工事現場に備え置き、発注者から求められたときに閲覧できるようにします。公共工事では台帳の写しを発注者に提出する義務があります。下請の追加や技術者の交代があれば、そのたびに台帳と体系図を直します。
ステップ6|引渡しから5年間保存する
施工体制台帳は営業所に備える帳簿の添付書類として、工事の目的物を引き渡した日から5年間保存します。施工体系図は営業に関する図書として10年間の保存が求められているので、台帳と体系図で年数が違う点に注意してください。安全書類全体の保存年数は安全書類の保存期間で整理しています。
差し戻されやすい記入ミス

事務代行で台帳まわりの書類を扱っていて、繰り返し見かける間違いをまとめます。どれも「書き方を知らない」のではなく「照合していない」ことが原因です。
工事名称が契約書と違う
台帳の工事名称が社内略称、添付の契約書は正式名称、という不一致です。下請の再下請負通知書でも同じことが起きます。契約書の表記を正としてすべて揃えます。
下請の工期を元請の工期で書いている
下請の工期欄に元請の全体工期をそのまま入れてしまう例です。下請契約書の工期を書くのが正しく、下請契約書の写しと見比べればすぐ分かります。
技術者の写しが片方しかない
資格証の写しは付いているのに雇用関係の証明がない、またはその逆です。技術者1人につき2種類の写しが必要と覚えておきます。
二次以下の下請が抜けている
一次下請が自分の分だけ提出し、二次・三次の再下請負通知書が届いていないケースです。現場に入っている会社と台帳の会社数が合わない状態で、発注者の点検で指摘されます。一次下請に下位の分までまとめて出す役割があることを、依頼時に伝えておきます。
変更があったのに台帳が初版のまま
途中で下請が入れ替わった、技術者が交代した、工期が延びたのに台帳が最初のままという状態です。変更が出たら下請に変更届(再下請負通知書の変更)を出してもらい、台帳と体系図を差し替えます。
よくある質問(FAQ)
Q. 下請契約が1社だけでも施工体制台帳は必要ですか?
A. 公共工事なら1社でも金額に関係なく必要です。民間工事では下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式は7,000万円以上)になるかどうかで判断するので、1社でも金額が基準を超えれば必要です。
Q. 一人親方に台帳を作る義務はありますか?
A. 作る義務があるのは元請です。一人親方が下請として入る場合は、元請の台帳のために再下請負通知書(自分がさらに下請を使う場合)や作業員名簿を提出する側になります。一人親方が元請として下請を使い、基準を超える場合は作成が必要です。
Q. 全建統一様式を使わないといけませんか?
A. 様式は法律で決まっていないので、記載事項を満たしていれば自社様式でも構いません。実務では元請が全建統一様式かシステム出力を指定することが多いため、元請の指定に従います。
Q. グリーンサイトで出力した台帳なら紙は要りませんか?
A. 元請がグリーンサイトやBuildeeで台帳を管理している現場では、システム上の情報が台帳として扱われます。ただし、発注者への写しの提出や現場での閲覧に紙の出力を求められることはあるので、元請の運用に合わせます。
Q. 健康保険証の写しが出せないときはどうすればいいですか?
A. 雇用関係の証明は健康保険証に限りません。標準報酬決定通知書や住民税の特別徴収税額通知書の写しなど、元請が認める書類で代えられます。従来型の保険証を持っていない人が増えているので、元請にどの書類で受け付けるかを確認してください。
Q. 工事が終わったあと台帳はいつまで置いておきますか?
A. 目的物の引渡しから5年間です。施工体系図は10年間なので、まとめて保管する場合は長いほうの10年に合わせておくと管理が楽です。
まとめ|台帳は「集めて照合して綴じる」書類
施工体制台帳は、元請自身の欄・下請ごとの欄・添付書類の3つで構成され、記載事項と添付書類は法令で決まっています。元請の仕事は自社分を先に仕上げ、下請から再下請負通知書と作業員名簿、技術者の証明書類を集めて照合し、綴じることです。民間工事の作成基準は下請契約の総額4,500万円以上(建築一式7,000万円以上)、保存は引渡しから5年、施工体系図は10年という数字を押さえておけば、迷う場面は減ります。
とはいえ、現場が重なると「どの下請の書類がまだ来ていないか」を追うだけで時間が消えます。マッセでは施工体制台帳の作成代行として、台帳本体だけでなく施工体系図・再下請負通知書・作業員名簿まで台帳まわりをまとめてお手伝いしています。グリーンサイトやBuildeeでの入力は登録代行、Greenfile.workの現場はグリーンファイル代行、紙の様式や元請指定の書式も建設業の書類作成代行で対応します。月額プランは基本プラン(作業員3名まで込み)で月額30,000円〜(税別)、1現場だけの単発もお見積りします。くわしくはサービス・料金をご覧ください。なお、金額基準や様式は改正されることがあります。最新の内容は国土交通省と元請の案内でご確認ください。

