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決算書が届くと、次に待っているのが決算変更届です。そこに添える工事経歴書を作るために、1年分の請求書の控えと見積書を出してきて、工事ごとに金額と工期と注文者を書き出していく。この作業に毎年数日を潰している会社は、私たちが事務を引き継いだ先でも珍しくありません。この記事では、工事経歴書が毎年必要になる制度の実情を公式の手引きで確認できた範囲で整理し、なぜ作るのが大変なのか、工事台帳に日頃から積んでおけば転記で済むという考え方と、台帳へ入れておくべき項目を、事務代行の現場で見てきた実例をもとに解説します。

工事経歴書は毎年必要になる。決算変更届と経審の実情
工事経歴書は、建設業法施行規則の様式第二号で定められた書類で、直前の事業年度に施工した工事の実績を、許可を受けている建設工事の種類ごとに一覧にしたものです。建設業許可を持っている会社にとって、これは「許可を取るときに一度作る書類」ではなく、毎年作る書類です。
決算変更届は事業年度終了後4か月以内
建設業許可を受けた会社は、毎事業年度が終わるごとに、決算の内容を許可行政庁に届け出なければなりません。建設業法第11条に基づく届出で、「決算変更届」「事業年度終了届」「変更届出書(決算報告)」など呼び方は都道府県によって違いますが中身は同じです。提出期限は事業年度終了後4か月以内で、大阪府・埼玉県・三重県など各都道府県の公式案内で共通して確認できます。3月決算なら7月末、6月決算なら10月末が期限です。
添付書類として各都道府県の案内に共通して挙げられているのが、変更届出書、工事経歴書(様式第二号)、直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第三号)、財務諸表、事業税の納税証明書です。決算書や納税証明書は税理士や役所から出てきますが、工事経歴書と工事施工金額だけは、会社の中にある情報から自分で作らなければなりません。
経審を受ける会社は同じ工事経歴書をもう一段きっちり作る
経営事項審査(経審)は、国土交通省の案内によれば、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査で、経営状況と、経営規模・技術的能力その他の客観的事項を数値で評価します。埼玉県の手引きには、変更届出書(決算報告)に添付して提出した工事経歴書は経審においても用いることができると明記されています。決算変更届のときに作った工事経歴書が、そのまま経審の土台になるということです。
ただし経審を受ける場合は記載件数のルールが厳しくなり、「主な工事を10件ほど」では済みません。完成工事高の7割を超えるところまで請負代金の大きい順に並べる必要があるので、工事1件ごとの金額が正確にそろっていないと作れません。
届出の作成・提出代行は行政書士の仕事
線引きをはっきりさせておきます。決算変更届は官公署に提出する書類なので、報酬を得てその作成や提出を代行できるのは行政書士だけです。事務代行であるマッセが決算変更届や経審の申請書類そのものを作ることはありません。この記事で扱うのは、その前の段階、つまり「工事1件ごとの情報を会社の中で整えておく」部分です。ここが整っているかどうかで、行政書士に依頼するときの手間も、自社で作る場合の日数も、まったく変わります。
毎年「請求書と見積をひっくり返す」のはなぜか
工事経歴書の項目自体は難しくありません。それでも毎年数日かかるのは、書く内容が難しいからではなく、必要な情報が会社のあちこちに散っているからです。私たちが引き継いだ会社で起きていた典型を4つ挙げます。
工事1件の情報が5か所に分かれている
注文者と工事名は請求書の控えに、請負代金は見積書と請求書に、工期は工程表か日報に、配置技術者は安全書類の控えに、元請か下請かの別は契約書か注文書に書いてあります。1件分をそろえるだけで5つのファイルを開くことになり、年間30件なら150回の照合です。これが「ひっくり返す」作業の中身です。
業種ごとに分けて、請負代金の大きい順に並べ替える
工事経歴書は、許可を受けている建設工事の種類ごとに作成します。複数の業種の許可を持っていれば、工事をどの業種に振り分けるかを1件ずつ判断し、業種ごとに請負代金の大きい順に並べなければなりません。請求書の控えは日付順に綴じてあるので、ここで必ず並べ替えの手作業が入ります。
追加変更で金額が変わった工事を追えない
手引きには、請負金額に変更があった場合は変更後の金額を記入すると書かれています。ところが追加工事の請求が別の請求書で出ていると、最初の見積金額で経歴書を作ってしまい、工事施工金額の合計と決算書の完成工事高が合わなくなります。この「合わない原因を探す」時間が、経歴書作りで一番長い時間です。追加変更の金額が台帳に乗っていない問題は、建設業の請求漏れを防ぐ方法で書いた請求漏れとまったく同じ根を持っています。
工期と配置技術者を1年後に思い出せない
経歴書には着工年月と完成年月、配置技術者の氏名と主任技術者・監理技術者の別を書きます。埼玉県の手引きでは、配置技術者欄は新規申請以外は必ず記入するとされています。1年前の小さな現場の着工月を、請求書の日付から逆算して「たぶんこの月」と埋めている会社は多いはずです。金額と違って、工期と技術者は後から証拠を探しにくい情報です。

考え方を変える。工事経歴書は「作る」のではなく台帳から「転記する」
解決の方向はひとつです。工事経歴書を年に1回ゼロから組み立てるのをやめて、工事台帳に日頃から積んである情報を、年に1回、様式の順に転記するだけにする。工事台帳の役割そのものについては工事台帳のExcel管理に限界を感じたらで詳しく書きましたが、ここでは経歴書との関係だけを押さえます。
経歴書の項目と工事台帳の項目はほぼ重なる
工事台帳は、工事1件ごとに注文者・工事名・現場・契約金額・工期・原価・請求・入金を1か所にまとめた帳簿です。工事経歴書の項目を横に並べると、台帳の情報で埋まらないものはほとんどありません。
| 工事経歴書(様式第二号)の項目 | 工事台帳にある情報 | 情報が生まれるタイミング |
|---|---|---|
| 注文者 | 注文者(元請・施主) | 受注時 |
| 元請又は下請の別 | 契約の種別 | 受注時 |
| JVの別 | 契約の種別 | 受注時 |
| 工事名 | 工事名 | 受注時 |
| 工事現場のある都道府県及び市区町村名 | 現場所在地 | 受注時 |
| 配置技術者の氏名、主任技術者又は監理技術者の別 | 担当者・配置技術者 | 着工前 |
| 請負代金の額(変更後の金額) | 契約金額+追加変更の金額 | 受注時と追加変更のたび |
| 工期(着工年月、完成又は完成予定年月) | 着工日・完成日 | 着工時・完工時 |
右の列を見てください。経歴書に必要な情報は、すべて工事の途中のどこかで一度は会社の中に生まれています。問題はそれが台帳に書かれずに、請求書や工程表やLINEのやり取りに散って残っていることです。
年に1回の数日を、日々の数分に分ける
受注したときに注文者・工事名・現場・元請下請の別・契約金額を台帳に入れる。着工したら着工日と配置技術者を入れる。追加変更があればその金額を同じ工事に足す。完工したら完成日を入れる。1件あたり合計で数分の入力です。これを積んでおけば、決算後にやることは「前事業年度に完成した工事を業種ごとに抽出し、請負代金の大きい順に並べる」だけになります。
工事施工金額と決算書の完成工事高が自然に合う
様式第三号の工事施工金額は、直前3年の各事業年度に完成した工事の請負代金の額を業種ごとに合計する書類です。台帳の金額が追加変更まで含めて正しければ、経歴書の合計と施工金額と決算書の完成工事高が一致します。毎年「合わない原因探し」に使っていた時間は、台帳が正しければ発生しません。

工事経歴書の書き方と、工事台帳に日頃から入れておく項目
ここからは、様式第二号の記載要領として都道府県の手引き(埼玉県の変更届出書(決算報告)の手引き)で確認できたルールを整理し、台帳に持たせておくべき項目を挙げます。細かな取り扱いは都道府県ごとに違うので、提出先の最新の手引きを必ず確認してください。
記載件数のルールは経審を受けるかどうかで変わる
経審を申請しない場合は、前事業年度に完成した主な建設工事を請負代金の大きい順に10件程度記入し、それに続けて主な未成工事を請負代金の大きい順に記入します。実績がない業種も、建設工事の種類を書いて「該当なし」と記入して添付します。
経審を申請する場合は、まず元請工事の完成工事について、その請負代金の合計額の7割を超えるところまで請負代金の大きい順に記入します。次に、それ以外の元請工事と下請工事の完成工事について、すべての完成工事高の7割を超えるところまで請負代金の大きい順に記入し、最後に主な未成工事を記入します。税込500万円未満(建築一式は税込1,500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅)の工事は10件まで記入すればよいとされています。
税抜・税込、金額変更、分割計上のルール
消費税の課税事業者は工事経歴書と財務諸表を税抜で、免税事業者は税込で作成します。請負金額に変更があった場合は変更後の金額を記入します。1件の請負契約を分割して複数の工事として計上することはできず、建築一式工事を複数の専門工事に分けて計上することもできません。
工事台帳に足しておきたい4つの項目
売上・原価・入金を管理するための工事台帳には、経歴書のために足しておきたい項目が4つあります。どれも受注時か着工時に一度入れるだけです。
- 業種区分:その工事を許可業種のどれに計上するか。受注時に決めておけば業種ごとの並べ替えが機械的にできる
- 元請・下請・JVの別:契約書を見れば一目でわかるが、1年後に探すのは手間
- 配置技術者と主任・監理の別:安全書類を作るときに一緒に台帳へ
- 税抜の最終請負代金:追加変更を含めて1本にしておく。請求書が複数枚でも台帳では1件
決算後に転記するだけにするためのチェックリスト
- 前事業年度に完成した工事がすべて台帳に載っていて、完成日が入っているか
- 追加変更の金額が元の工事に足されていて、請負代金が最終額になっているか
- 業種区分と元請下請の別が空欄の工事がないか
- 配置技術者と着工年月が入っているか
- 期末時点で完成していない工事(未成工事)が区別できるか
- 台帳の完成工事の合計が、決算書の完成工事高と合うか
この6つが決算を締める前に揃っていれば、工事経歴書は様式に転記するだけの作業になり、行政書士に頼むときも「工事一覧を渡すだけ」で済みます。

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サクミルの工事台帳。案件ごとの売上・原価・利益が日々の入力でそろう
「日頃から台帳に積む」を実際に続けるには、受注・見積・請求・日報の入力が、そのまま工事1件の記録として残る道具が要ります。マッセが紹介パートナーとして取り扱っているのが、建設業向けのクラウド型現場管理・工事管理システム「サクミル」です。以下の内容は、2026年10月時点の公式サイトの記載に基づいています。
概要と料金
サクミルは株式会社プレックス(東京都中央区)が運営し、顧客管理・案件管理・見積管理・実行予算・原価管理・請求管理・作業日報・スケジュール・写真管理・ファイル管理・工事台帳・出面管理・発注仕入管理の機能を備えています。工事台帳については、案件ごとの売上・原価・利益をリアルタイムに把握でき、日報からの原価自動集計で転記ミスを防ぐ、と公式サイトに記載されています。
| 月額基本料 | 9,800円〜(税別)、20アカウントまで |
|---|---|
| 初期費用 | 0円 |
| 無料トライアル | 2ヶ月(期間終了後の自動課金なし) |
| 導入実績 | 3,000社以上、月間新規200社以上 |
| サポート | 専任サポート担当が導入支援、初回セットアップはオンライン約30分・無料 |
工事経歴書の準備で効くところ
案件を登録した時点で顧客(注文者)・工事名・金額が1件の案件に紐づき、見積から請求、原価、日報が同じ案件の下に積まれていきます。追加の見積や請求も同じ案件に入るので、請負代金の最終額が別々の請求書を足し合わせなくても案件単位で見えます。決算後に前事業年度の案件一覧を金額順に見る、という使い方が、経歴書作りの「ひっくり返す」工程を置き換えます。
経歴書そのものが自動で出てくるわけではない
正直に書いておきます。公式サイトには、工事経歴書の様式を自動作成する機能は記載されていません。サクミルがやるのは、工事1件ごとの情報を日々の業務の結果として正確に積むことまでで、様式第二号への転記と件数ルールの適用は、人(自社か行政書士)が行います。ただ、大変なのは転記ではなく情報を集める工程なので、台帳が正しくできているだけで作業の大半は消えます。機能の詳細や画面のイメージ、無料トライアルの申込手順はサクミルの紹介ページにまとめています。マッセ経由で正式利用を申し込むと無料期間が1ヶ月延長され、実質3ヶ月無料で試せます。
マッセとの併用。資料の整理まではマッセ、届出は行政書士
システムを入れても、入力する人は要ります。社長が現場に出ていて事務担当を置けない会社では、案件の登録や請求書の発行、原価登録が止まり、台帳が更新されず決算前に慌てる、という元の状態に戻りがちです。
マッセが引き受けるのは「社内の資料を整える」範囲
マッセは建設業に特化した事務代行で、グリーンサイトや各元請の安全書類、CCUSの登録手続き、請求書の発行や経理の入力を、LINEでのやり取りで代行しています。工事経歴書との関係で言えば、マッセがやるのは、案件の登録、追加変更の金額の反映、配置技術者や工期の記録、請求書控えとの突合、決算後に完成工事の一覧を業種ごと・金額順に整えて社長や行政書士に渡すところまでです。決算変更届や経審の申請書類の作成・提出は行政書士の業務なので、マッセは行いません。料金やプランはマッセのサービス案内をご覧ください。
年間の流れをこうする
受注のたびに、社長がLINEで注文書や契約書の写真を送る。マッセがサクミルに案件を登録し、業種区分と元請下請の別を入れる。職長は日報と写真をスマホから入れ、配置技術者が決まったらマッセが記録する。追加変更は同じ案件に足し、完工したら完成日を入れる。決算を締めたら、マッセが完成工事の一覧を業種ごと・金額順に抽出し、決算書の完成工事高と合うことを確認して行政書士に渡す。これで事業年度終了後4か月という期限に、毎年同じ段取りで間に合います。

よくある質問
Q. 決算変更届を出さないとどうなりますか?
建設業法第11条に基づく義務なので、未提出のまま放置することはできません。期限を過ぎた場合の取り扱いは提出先の都道府県の手引きで確認し、遅れている場合は早めに行政書士へ相談してください。遅れの原因が「工事経歴書が作れない」ことなら、来年に向けて台帳の整え方から見直すのが根本の対策です。
Q. 工事が少ない年でも工事経歴書は必要ですか?
必要です。実績がない業種についても、建設工事の種類を記入して「該当なし」と書いたうえで添付するとされています。実績がない業種は1枚にまとめて作成してもよい、とする手引きもあります。
Q. 追加工事の請求書が別になっている場合、経歴書にはどう書きますか?
1件の請負契約を分割して複数の工事として計上することはできないので、元の工事に追加変更分を足した「変更後の金額」を1件として記入します。請求書が2枚に分かれていても、経歴書上は1件です。台帳側で追加変更を同じ工事に足しておけば、ここで迷いません。
Q. 行政書士に頼んでいるので、自社で台帳を整える意味はありますか?
あります。行政書士は会社から受け取った情報をもとに書類を作るので、工事一覧がそろっていなければ、結局は会社側が請求書と見積を掘り返して質問に答えることになります。台帳から出した一覧を渡せれば、往復が減り、金額の不一致を直す時間もなくなります。
サクミルの無料トライアル(マッセ経由で実質3ヶ月無料)の申込相談は、サクミルの紹介ページから受け付けています。「来年の決算変更届を楽にするには何から入力すればいいか」「今の請求書控えの束からどう移すか」といった導入前の疑問にも、事務代行の立場からお答えします。
まとめ:工事経歴書は年1回の仕事ではなく、日々の台帳の結果にする
工事経歴書は、建設業許可を持つ会社が決算変更届のために毎年、事業年度終了後4か月以内に作る書類で、経審を受ける会社はさらに厳しい件数ルールで整えます。作るのが大変なのは様式が難しいからではなく、注文者・金額・工期・配置技術者・元請下請の別が、請求書や工程表や安全書類に散って残っているからです。工事台帳に受注時・着工時・追加変更時・完工時の数分ずつで情報を積んでおけば、決算後は業種ごとに金額順へ並べて転記するだけになります。届出の作成は行政書士の仕事ですが、その前の資料を整えるのは会社の仕事です。サクミルで工事1件ごとの情報を日々の入力の結果として残し、入力と資料整理をマッセが担う。来年の決算変更届を「数日の作業」から「一覧を渡すだけ」に変える組み合わせとして検討してみてください。

