安全衛生責任者とは、統括安全衛生責任者が選任される建設現場で、下請業者(関係請負人)が自社の労働者の安全確保のために選任する責任者のことです(労働安全衛生法第16条)。元請の統括安全衛生責任者との連絡・調整が主な職務で、下請として現場に入る一人親方・小規模業者に最も身近な安全管理の役職です。この記事では、選任が必要なケース、職務内容、職長との違いを解説します。
安全衛生責任者とは|下請が選任する「連絡調整役」

安全衛生責任者は、労働安全衛生法第16条に基づき、統括安全衛生責任者が置かれる現場で仕事を請け負う下請業者が選任する役職です。元請と下請の間の安全衛生に関する「パイプ役」と考えると分かりやすいでしょう。
建設現場では複数の会社の労働者が同じ場所で作業するため、連絡不足による労働災害が起きやすくなります。そこで元請側に統括安全衛生責任者(安衛法第15条)を置き、各下請側に安全衛生責任者を置いて、両者の連携で現場全体の安全を管理する仕組みになっています。選任したら、遅滞なくその旨を元請(統括安全衛生責任者を選任した事業者)に通報する義務があります。
選任が必要になるのはどんな現場か

選任義務が生じるのは「統括安全衛生責任者が選任される現場で仕事を請け負ったとき」です。具体的には次の規模の建設現場が該当します。
- 元請・下請合わせて労働者が常時50人以上の現場(統括安全衛生責任者の選任義務が発生)
- ずい道(トンネル)建設、圧気工法による作業、一定の橋梁建設の現場では常時30人以上
実務上は、法律上の義務がない規模の現場でも、元請のルール(安全書類・グリーンサイト等)で安全衛生責任者の届出を求められるのが一般的です。再下請通知書や作業員名簿とあわせて、現場入場時の必須書類と考えておきましょう。なお、労働者を使用しない一人親方は「関係請負人の労働者」の枠組みとは異なりますが、現場ルールとして同様の届出を求められることが多くあります。
安全衛生責任者の職務|法令で定められた6つの仕事
安全衛生責任者の職務は労働安全衛生規則第19条に定められています。中心は統括安全衛生責任者との連絡と、その内容の自社・関係者への伝達です。
- 統括安全衛生責任者との連絡
- 統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への伝達
- 連絡事項のうち自社に係るものの実施についての管理
- 自社が作成する作業計画と元方事業者の計画との整合性を図るための統括安全衛生責任者との調整
- 自社の労働者の作業が他社の労働者に危険を及ぼすおそれの有無の確認
- 自社が再下請に出す場合の、後次の請負人の安全衛生責任者との連絡・調整
要するに「元請からの安全指示を自社の職人にきちんと落とし込み、自社の作業状況を元請に上げる」双方向の窓口業務です。安全朝礼や現場の安全工程打合せ(連絡調整会議)への出席も、この職務の一環になります。
資格は不要だが「職長・安全衛生責任者教育」が事実上の必須
安全衛生責任者に法律上の資格要件はありません。ただし厚生労働省の通達により、建設業では「職長・安全衛生責任者教育」(計14時間程度)を受けた者を選任することが求められており、実務では修了証の提示が事実上の必須条件になっています。
職長(作業中の労働者を直接指導監督する者。安衛法第60条の職長教育が必要)と安全衛生責任者は役割が異なりますが、建設現場では同一人物が兼ねることが多いため、両方の内容をまとめた「職長・安全衛生責任者教育」として実施されるのが一般的です。受講後もおおむね5年ごとの能力向上教育(再教育)が推奨されています。講習は各地の労働基準協会や建設業団体、Web講座でも受講できます。
よくある質問(FAQ)
安全衛生責任者と職長の違いは何ですか?
職長は自社の作業員を現場で直接指揮監督する役割(安衛法第60条の教育対象)、安全衛生責任者は元請の統括安全衛生責任者との連絡調整役(同法第16条)です。役割は別ですが、同じ人が兼任するのが一般的です。
社長や一人親方本人が安全衛生責任者になれますか?
なれます。小規模な下請では事業主本人や現場に常駐する職長クラスが務めるのが実態です。現場のことが分かり、その現場にいる人を選任するのが原則です。
選任しなかった場合、罰則はありますか?
安全衛生責任者の選任義務違反には罰則の定めはありません。ただし労働災害発生時の責任追及や元請からの入場拒否・取引停止につながるため、実務上は必ず選任・届出すべきです。
修了証がないと現場に入れませんか?
法律上の入場要件ではありませんが、元請の安全管理基準で職長・安全衛生責任者教育の修了証を求められることが多く、未受講だと安全衛生責任者として届け出られない場合があります。早めの受講をおすすめします。
まとめ|下請の安全管理は安全衛生責任者から
安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者が置かれる現場(元請・下請合計50人以上、ずい道等は30人以上)で下請業者が選任する連絡調整役です(労働安全衛生法第16条・安衛則第19条)。資格要件はないものの、職長・安全衛生責任者教育の修了が事実上求められます。元請との連携窓口として、現場の安全と自社の信用を支える重要な役職です。
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