工事の粗利管理はどこから始めるか|案件別の利益を工事中に見る仕組み

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「この現場、儲かったんですか」と聞かれて即答できる社長は少ないです。仕入先と外注先の請求書は月末や翌月に届き、職人の給料は現場をまたいで払っているので、工事1件の粗利が確定するのは早くても完工の2か月後、多くの会社では決算のあとです。この記事では、「終わってみたら赤字」が起きる構造、粗利の計算方法、公的な経営分析で確認できる粗利率の目安、案件別の利益を工事中に見るためのデータと手順を、事務代行の現場で見てきた実例をもとにまとめます。

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目次

「終わってみたら赤字」が起きる3つの構造

工事の赤字は、現場の腕が悪いから起きるのではありません。事務を引き継いだ会社の帳簿を見ると、赤字の工事には「赤字になりつつあることを途中で誰も知らなかった」という共通点があり、その理由は3つに集約されます。

1. 原価が工事に紐づかないまま会計に入っている

仕入先からは月1回まとめて請求書が届き、複数の現場で使った材料が混ざっています。会計ソフトには「材料費 ○○円」と1行で登録され、どの工事の分かは誰も振り分けていません。外注費も同じです。会社全体の粗利は決算書で出ても、工事ごとの粗利は永久に出ません。

2. 追加工事と追加原価が別々に動いている

現場で元請の監督から「ここもやっておいて」と頼まれ、職長がその場で対応する。材料と人工は確実に増えていますが、追加の見積も請求も出ていなければ売上は増えません。追加工事の取りこぼしは、粗利の観点では「原価だけが増えて売上が増えない」という直接的な赤字の原因です。

3. 見積の粗利と実績の粗利を誰も突き合わせていない

見積の時点では「この工事は粗利25%で受けた」という数字が社長の頭にあります。問題はその後で、見積の内訳を実行予算として残し、実際の原価を同じ項目で並べて比べている会社はごく少数です。見積と実績が別のファイルにある限り、「予定より外注費が15%超えている」という事実は誰の目にも入りません。別の記事で整理した工事台帳をExcelで管理する限界の中心がこれです。

工事の粗利の計算方法。売上から引く「原価」の中身

粗利の式は単純です。問題は「原価に何を入れるか」で、建設業の会計で使われている分類に合わせておくと、税理士や経審の資料とも整合します。

粗利と粗利率の式

工事の粗利(完成工事総利益)は、その工事の売上(請負金額+追加工事の金額)から、その工事にかかった原価(完成工事原価)を引いた金額です。粗利率は粗利を売上で割った割合です。売上に追加工事を入れるなら原価にも追加分を入れる、と必ず同じ範囲でそろえます。

原価の4分類。材料費・労務費・外注費・経費

建設業法施行規則の財務諸表の様式では、完成工事原価を材料費・労務費・外注費・経費の4つに分けて報告します。工事ごとの原価管理もこの4分類に合わせます。

分類中身工事に振り分けるときの実務
材料費工事に使った資材・部材・消耗材料納品書と請求書に工事名を書かせ、工事ごとに分ける
労務費自社の職人・作業員が従事した分の賃金日報の人工に1人1日あたりの単価をかける
外注費協力会社・一人親方への支払い注文書・請求書に工事名を入れる。常用は出面で按分
経費運搬費、重機リース、仮設、産廃処分費など工事ごとのものはその工事へ。複数現場にまたがるものは按分

原価に入れないもの、入れ忘れやすいもの

事務所の家賃、事務員の給料、役員報酬、広告費などは工事の原価ではなく販売費及び一般管理費(販管費)です。逆に入れ忘れが多いのは自社の職人の労務費です。給料は毎月決まった額なので原価という感覚が薄く、外注費と材料費だけで計算して、実際より10ポイント以上高い粗利率を信じているケースを何度も見ました。

建設業の粗利率の目安。公的な経営分析で確認できる数字

「うちの粗利率は低いのか」とよく聞かれるので、公表されている統計で確認できる数字を挙げます。いずれも建設業者の決算書を集計した令和5年度決算分の平均値で、自社の立ち位置を知る物差しとして読んでください。

建設業情報管理センター「建設業の経営分析」

一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)の「建設業の経営分析(令和5年度)」は、経営状況分析を申請した法人44,320社の財務比率を集計したものです。売上高総利益率、つまり粗利率の全体平均は25.95%。業種別では設備工事業30.08%、職別工事業28.08%、土木工事業25.15%、建築工事業19.64%、土木建築工事業18.05%です。売上高別では5千万円未満が34.59%、20億円以上が15.16%と、売上規模が小さいほど粗利率は高くなります。

東日本建設業保証「建設業の財務統計指標」

東日本建設業保証株式会社も、東日本23都県の法人20,574社について「建設業の財務統計指標(令和5年度決算分析)」を公表しています。粗利率の全体平均は23.75%で、業種別では電気工事業29.70%、管工事業26.80%、建築18.65%、土木建築17.36%。対象も地域も違う2つの統計で、「設備系は高く、建築一式は低い」「小規模ほど粗利率は高い」という傾向が一致しています。

粗利率が高くても赤字になる。小規模の会社に見える構造

注意してほしいのは、小規模な会社の粗利率が高いのは「儲かっているから」ではない点です。同じ統計で、粗利率と販管費の割合(売上高一般管理費率)、営業利益率を売上高別に並べます。

売上高の階層売上高総利益率(粗利率)売上高一般管理費率売上高営業利益率
1億円未満30.50%33.56%-2.92%
1億円以上5億円未満24.03%21.59%2.29%
5億円以上10億円未満19.76%15.34%4.25%
10億円以上30億円未満16.95%12.35%4.72%
全体(20,574社)23.75%22.06%1.72%

出典は東日本建設業保証「建設業の財務統計指標 令和5年度決算分析」の平均値です。売上1億円未満の会社は粗利率30%を確保していても、販管費が売上の33%を占めるため営業利益率は平均でマイナスです。つまり小規模な工事会社の目安は「業界平均の25%前後」ではなく、自社の販管費率に確保したい営業利益率を足した水準です。販管費が売上の30%かかる会社なら、粗利率30%の工事は利益ゼロ、25%の工事は受けた時点で赤字です。この計算は、工事ごとの粗利が見えていなければ始められません。

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案件別の利益を工事中に見る仕組み。必要なデータと5つの手順

案件別の粗利を工事中に見るために必要なことは、「1件の工事に関わる数字を、同じ工事番号の下に、発生した日に集める」というひとつのルールに尽きます。最低限そろえるデータと着手の順番を整理します。

最低限そろえる4つのデータ

  • 工事ごとの契約金額と追加工事の金額(売上の側)
  • 工事ごとの実行予算(材料費・労務費・外注費・経費の4分類で、見積の内訳から作る)
  • 工事ごとの原価実績(工事に振り分けた仕入・外注の金額と、日報から出した人工)
  • 工事ごとの請求と入金(出来高請求の進み方と入金済みの金額)

この4つが同じ工事番号で並べば、「予算に対して今いくら使ったか」「請求はどこまで進んだか」が工事の途中で読み取れます。

手順1. 工事番号を決めて、すべての伝票に書く

受注した工事に年度と連番で番号をつけ、注文書、納品書、日報、写真、請求書のすべてにこの番号を書くルールにします。仕入先にも納品書と請求書への記載を頼みます。この一手間で、請求書を工事に振り分ける作業が推理から転記に変わります。

手順2. 見積の内訳から実行予算を作る

見積書の金額を材料費・労務費・外注費・経費の4分類に組み替えたものが実行予算です。見積が一式表記でも、社長の頭にある「材料でこれくらい、外注でこれくらい」という内訳を数字にして残します。あとで実績と比べられる形で残すことが大事です。

手順3. 日報で人工を毎日拾う

自社の労務費は日報がなければ工事に振り分けられません。「誰が、どの工事番号の現場に、何人工入ったか」を毎日記録し、1人1日の単価をかければ、その日の労務費がその工事に乗ります。紙で集めて転記する方式では続かないので、現場からスマホで入れられる形が現実的です。選び方は作業日報アプリの選び方で整理しています。

手順4. 仕入・外注の請求書は届いた日に工事へ振る

請求書を月末にまとめて処理していると、原価が工事に乗るのは翌月以降になり、工事中に粗利を見るという目的が崩れます。届いたその日に工事番号ごとに登録する運用に変えるだけで、原価の反映は1か月早まります。

手順5. 週に1回、予算と実績を並べて見る

週に1回、進行中の工事の「実行予算」「原価実績」「残予算」「請求済み額」を1枚で眺める時間を10分だけ取ります。外注費が予算の8割に達しているのに工程が半分なら、その時点で手を打てます。「終わってみたら赤字」を防ぐのはこの10分です。

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サクミルの工事台帳。案件ごとの売上・原価・利益をリアルタイムに表示

この5つの手順をExcelと紙で回すことは可能ですが、人力で続けるには根気がいります。この流れをひとつの画面で回せるように作られているのが、マッセが紹介パートナーとして取り扱っているクラウド現場管理アプリ「サクミル」です。以下は2026年10月時点の公式サイトの記載に基づいています。

工事台帳と実行予算・原価管理の機能

サクミルは、株式会社プレックス(東京都中央区)が運営する建設業向けのクラウド型現場管理・工事管理システムです。工事台帳の機能は公式サイトで「案件ごとの売上・原価・利益をリアルタイムに把握。日報からの原価自動集計で転記ミスを防止」と説明されています。実行予算・原価管理では、案件ごとに実行予算と原価を登録し、資材費・労務費・外注費・経費の項目別に原価と粗利を管理できます。この記事で書いた原価の4分類とそのまま対応する形です。作業日報はスマホから入力でき、出面管理では協力会社ごとの人工・稼働日数を日報から自動集計します。請求管理は出来高請求と入金管理まで対応し、発注・仕入管理で資材や外注の発注情報を一元管理できます。

料金と無料トライアル

料金は月額9,800円〜(税別)で20アカウントまで、初期費用は0円です。協力会社の登録はアカウント数に含まれません。導入社数は3,000社以上、月間の新規導入は200社以上と公表されており、専任のサポート担当が導入を支援します。導入事例には、各種設備工事のテクノ電業株式会社が「案件ごとの利益が見えない」という課題を解消し、事務工数を30%削減した例が掲載されています。無料トライアルは2ヶ月で自動課金はなく、マッセ経由で正式利用を申し込むと公式のアンバサダー制度により無料期間が1ヶ月延長され、実質3ヶ月無料で使えます。機能の詳細や画面のイメージはサクミルの紹介ページにまとめています。

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原価を入力する人がいなければ粗利は見えない。マッセとの併用

紹介パートナーとしてではなく、事務代行の立場で正直に書きます。サクミルを入れても、届いた請求書を案件に振り分けて登録する人、見積から実行予算を起こす人、請求書を発行して入金を突き合わせる人は必要です。アプリは現場の情報を集める道具であって、事務所側の入力が止まれば画面の粗利は実態からずれていきます。

マッセが引き受ける事務

マッセは建設業に特化した事務代行で、グリーンサイトや各元請の安全書類の作成・提出、CCUS(建設キャリアアップシステム)の事業者登録・技能者登録・現場登録、請求書の発行、経理の入力といった事務を、LINEでのやり取りで代行しています。サクミルを併用する場合は、届いた請求書の原価登録、請求書の発行と入金の確認、会計ソフトへの登録まで一緒に引き受けられます。料金やプランの詳細はマッセのサービス案内をご覧ください。

併用したときの役割分担

現場の職長は、日報(人工)と写真、追加工事のメモをスマホからサクミルに入れる。社長は、見積の承認と週1回の予算対実績のチェックを自分の端末で行う。それ以外の原価登録、請求書の発行、入金の突き合わせ、安全書類とCCUSの手続き、会計ソフトへの入力はマッセが引き受ける。事務担当を雇わなくても、案件ごとの粗利が工事中に見えている状態を保てます。

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よくある質問

Q. 社長が現場に出ている場合、自分の人工も原価に入れるべきですか?

入れてください。役員報酬そのものは販管費ですが、工事の採算を見るときは、社長が現場で作業した日数に職人と同じ単価をかけて労務費として数えないと、本当の粗利より高く見えます。

Q. 複数の現場にまたがる経費はどう振り分けますか?

車両費や共通の工具のリース代など分けられない経費は、人工や売上の比率で按分するルールを決めておきます。精密さより、毎回同じルールで振ることが大事です。

Q. 業界平均の粗利率を目標にすればよいですか?

平均値は立ち位置を知る物差しです。売上1億円未満の会社は平均で粗利率30%を超えていても営業利益率はマイナスでした。自社の販管費率に確保したい営業利益率を足した数字が守るべき粗利率です。まず決算書から販管費率を出すところから始めてください。

Q. 進行中の工事から始めても意味がありますか?

あります。完工済みの工事をさかのぼる必要はなく、「今日以降に受注する工事から工事番号を振る」と区切るのが現実的です。

サクミルの無料トライアル(マッセ経由で実質3ヶ月無料)の申込相談は、サクミルの紹介ページから受け付けています。「自社の規模で採算が合うか」「原価の入力を誰がやるか」といった導入前の疑問にも、事務代行の立場からお答えします。

まとめ:粗利は決算で知るものではなく、工事中に見るもの

「終わってみたら赤字」は、原価が工事に紐づかずに会計へ入り、追加工事の原価だけが増え、見積と実績を誰も比べていない構造から起きます。粗利は売上から材料費・労務費・外注費・経費を引いたもので、自社の労務費を入れ忘れると実態より良く見えます。公的な経営分析では粗利率の平均は25%前後ですが、小規模な会社は販管費が重く、営業利益率は平均でマイナスでした。目安は業界平均ではなく、自社の販管費率に確保したい利益を足した水準です。そのうえで、工事番号を全伝票に書く、見積から実行予算を作る、日報で人工を毎日拾う、請求書は届いた日に工事へ振る、週1回予算と実績を並べて見る、の5つを回せば、案件別の利益は工事中に見えます。この流れを1画面で回せるサクミルと、入力と安全書類・CCUS・経理を引き受けるマッセの組み合わせも検討してみてください。

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