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建設業の勤怠管理システムは、職人がスマホで打刻でき、現場ごとに勤務時間を集計でき、日給月給や現場手当の計算につながるものを選ぶのが基本です。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、労働時間を客観的な記録で把握する義務もあります。紙の出面表(でづらひょう。現場ごとに誰が何日働いたかを記す表)とExcelでは、この二つに応えにくくなりました。一人親方や工務店の事務を代行しているmasse(マッセ)が、選定基準、選択肢の例、導入手順、つまずきやすい点を順に説明します。
建設業の勤怠管理システムとは|紙の出面表とExcelが限界になる場面

勤怠管理システムとは、出勤と退勤の時刻をスマホやパソコンで記録し、労働時間や残業時間、休日の取得状況を自動で集計する仕組みです。建設業では、紙の出面表を現場監督が書き、月末に事務がExcelに打ち直す会社がまだ多くあり、現場と人が増えると次の場面で限界が来ます。
現場が複数あると出面表が月末まで集まらない
現場が並行すると出面表の書き手が分かれ、休憩を引いているかが表によって違う、応援で別の現場に回った日がどちらにも載っていない、といったことが起きます。事務は月末に職人一人ひとりに確かめながら打ち直すので、給与計算の締めが毎月ぎりぎりになります。労働時間の記録は後述のとおり3年間の保存が求められるので、紙のままでは義務も果たしにくくなっています。
直行直帰・日給月給・手当の計算が事務に集中する
建設業は現場へ直行し現場から直帰する働き方が普通で、会社のタイムカードでは打刻できません。「朝7時に現場に入った」という事実は監督の記憶か自己申告にしか残らず、残業時間も出面表の「1日」という単位では出せません。給与も、日給月給(日給に出勤日数をかけて月ごとに払う形)の職人と月給の社員が混在し、現場手当や早出・夜間の割増が人ごとに付くため、「どの現場に何日行ったか」が分からないと計算できません。
2024年4月から建設業にも適用された上限規制と、労働時間を記録する義務
建設業では、時間外労働の上限規制が2024年4月から適用されています。他の業種より5年間猶予されていたものが終わった形です。あわせて、労働時間を客観的な記録で把握する義務が2019年から全業種にあります。
時間外労働の上限|原則は月45時間・年360時間
厚生労働省の案内では、時間外労働(1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えた分)の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があって労使が合意した場合(特別条項)でも、次の表の上限を超えることはできません。違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
| 区分 | 上限 | 数え方 |
|---|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 | 時間外労働のみ |
| 特別条項あり(年) | 年720時間以内 | 時間外労働のみ |
| 特別条項あり(月) | 月100時間未満 | 時間外+休日労働 |
| 特別条項あり(複数月) | 2〜6か月平均80時間以内 | 時間外+休日労働 |
| 月45時間を超えられる回数 | 年6か月まで | 時間外労働のみ |
建設業の例外は「災害時における復旧及び復興の事業」です。厚生労働省のQ&Aでは、この事業に従事した時間には月100時間未満と複数月平均80時間以内の規定が適用されない一方、年720時間以内と月45時間超は年6回までの規定は適用されるとしています。
36協定とは|残業させるには協定の締結と届出が要る
36協定(さぶろくきょうてい)とは、法定労働時間を超えて働かせるために、会社と労働者の代表が結び、労働基準監督署に届け出る協定です。労働基準法第36条に根拠があるのでこう呼ばれます。協定を結ばずに、あるいは届け出ずに時間外労働をさせた場合や、協定で決めた時間を超えて働かせた場合は法律違反になります。システムで残業時間が見えると協定の上限とのずれも見えるので、導入と同時に36協定を確認する流れになります。
労働時間の客観的な把握義務(労働安全衛生法第66条の8の3)
労働安全衛生法第66条の8の3は、会社が労働者の「労働時間の状況」を把握することを義務づけた条文です。厚生労働省のリーフレットでは、把握の方法は原則としてタイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な方法とし、記録は3年間保存するとしています。対象は管理監督者も含むすべての労働者です。客観的に把握しがたい場合に限って自己申告も認められますが、直行直帰であることだけを理由に自己申告で済ませることは認められないと明記されています。スマホで会社のシステムに打刻できるなら、それが客観的な方法になります。
建設業ならではの勤怠管理システムの選定基準
建設業で見るべき点は、スマホで現場から打刻できるか、現場ごとに集計できるか、日給月給や手当の計算につながるか、職人が使い続けられるか、料金が人数で増えるかの5点です。
スマホ打刻と位置情報|直行直帰の記録を客観的にする
職人が自分のスマホから出勤と退勤を打刻でき、そのときの位置情報が残るものを選びます。位置情報は「現場にいた」ことの裏付けになります。専用アプリが要るか、ブラウザだけで使えるかも確認してください。アプリの更新やログインは、スマホに慣れていない職人ほどつまずきます。
現場ごとの打刻と現場別の集計
建設業の勤怠は「何時間働いたか」に加えて「どの現場で働いたか」が要ります。現場別の人工(にんく。1人が1日働く仕事量の単位)が分からないと、工事ごとの原価も現場手当も出せません。打刻のときに現場を選べるか、勤務地や拠点、部署の単位で集計できるかを確認します。多くのシステムでは「拠点」や「部署」の機能を現場として使う形になります。
日給月給・現場手当・休日の管理に対応できるか
日給月給の職人は、月の出勤日数と日ごとの残業時間が集計できれば給与計算の元になります。現場手当は、システム内で自動計算できるものと、現場別の出勤日数を給与計算側で掛け合わせるものに分かれるので、どこまでをシステムに任せるかを先に決めます。休日は現場ごとに違うため、シフトで予定と実績を見比べられるか、有給休暇の残日数が自動で管理されるかも確認します。
給与計算ソフトとつながるか・年配の職人でも使えるか
集計しても給与計算ソフトに手で打ち直すなら二重入力が残ります。使っている給与計算ソフトに合わせたCSV(表の形のデータファイル)を出せるか、残業を法定内・法定外・深夜・休日に分けて出せるかを確認します。操作は、事務代行の現場で見ていると、「出勤」「退勤」の2つだけが大きく出るもののほうが打刻の抜けが少ない傾向があります。無料体験で、一番スマホに慣れていない職人に触ってもらうのが確実です。
料金は人数課金か定額か
料金は、1人あたり月額いくらの人数課金と、人数の上限ごとに月額が決まる定額制に分かれます。人数課金は少人数のうちは安く、定額制は上限内なら人が増えても料金が変わりません。たとえば後述の 勤怠クラウド は従業員数の上限で月額が決まる定額制です。初期費用、最低利用期間、解約金、支払い方法も公式サイトで確認してください。
中小建設会社向けの選択肢の例|勤怠クラウドとRelix勤怠
ここでは、従業員5〜30人の会社が候補にしやすい、無料で試せる2つのサービスを例に挙げます。公式サイトで確認できた内容だけを書いています。KING OF TIMEやジョブカン勤怠管理、マネーフォワード クラウド勤怠のように多くの業種で使われているサービスもあります。料金やプランは変わることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
勤怠クラウド(株式会社エクレ)|人数上限ごとの定額制で36協定の超過を知らせる
勤怠クラウド は中小企業向けの勤怠管理システムです。公式サイトによると、パソコンとスマホのブラウザから打刻でき、専用アプリは不要で、打刻時の位置情報の記録に対応しています。拠点別・部署別に管理者の範囲を設定でき、36協定の超過や打刻漏れを知らせるアラートがあり、給与ソフト向けのCSVは残業を法定内・法定外・深夜・休日に分けて出力できます。料金は税込の定額制で、従業員50名まで月額4,950円、100名まで8,800円、300名まで16,500円、初期費用0円です。30日間は全機能を無料で使え、決済を登録しなければ料金は発生しません。
Relix勤怠(株式会社GRC)|出勤簿と交通費精算書を自動で作る
Relix勤怠 は、株式会社GRCが運営する勤怠管理システムです。公式サイトによると、パソコンやスマホからのWeb打刻に対応し、出勤・退勤のときにスマホのGPSで位置情報を取得して、管理者はGoogleマップと連携した一覧で確認できます。打刻の項目には日報報告や交通費申請もあり、打刻の結果から出勤簿と交通費精算書が作られ、CSVで出力できます。料金は税別で、10アカウント月額3,000円、30アカウント8,500円、50アカウント13,750円、100アカウント25,000円という段階の定額制で、初期費用と解約金は0円です。登録月とその翌月の最大2か月が無料です。
| 項目 | 勤怠クラウド | Relix勤怠 |
|---|---|---|
| 運営 | 株式会社エクレ | 株式会社GRC |
| 打刻 | PC・スマホのブラウザ(アプリ不要) | PC・スマホのWeb打刻 |
| 位置情報 | 打刻時に記録 | GPSで取得・地図で確認 |
| 現場・拠点 | 拠点別・部署別の管理者設定 | シフトで勤務地を管理 |
| アラート | 36協定超過・残業・打刻漏れ・有休5日 | 打刻がないとメール通知 |
| 出力 | 給与ソフト向けCSV・Excel・PDF | 出勤簿・交通費精算書・CSV |
| 料金の形 | 定額(税込)50名まで月4,950円から | 定額(税別)10アカウント月3,000円から |
| 初期費用 | 0円 | 0円 |
| 無料期間 | 30日間 | 最大2か月 |
| 支払い | クレジットカードのみ | クレジットカード・請求書払い |
| 日給月給・手当の計算 | 公式サイトで確認 | 公式サイトで確認 |
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勤怠管理システムの導入手順|1現場で試してから全社へ
導入は、全社に一斉に配るより、1現場で1か月試してから広げるほうが確実です。順番は次の7ステップです。
ステップ1|今の集め方を洗い出す
出面表を誰が書き、いつ事務に届き、誰がExcelに打ち、どの給与計算ソフトに入れているかを書き出します。実態が見えると、システムに置き換える範囲が決まります。
ステップ2|必要な項目を決める
出退勤の時刻、現場名、休憩時間、現場手当の有無など、給与計算に必要な項目を書き出し、打刻で取るものと、監督や事務が後から入れるものに分けます。
ステップ3|無料トライアルに申し込む
候補を2つまでに絞って無料期間に申し込みます。初日に現場名、職人の名前、所定労働時間、休日のパターンを登録し、事務と監督が管理画面を触ります。体験の終わりに自動で課金されるかはサービスで違うので確認します。
ステップ4|1現場で1か月試す
協力的な監督がいる現場を1つ選び、職人全員にスマホ打刻をしてもらいます。従来の出面表も並行して続け、月末に見比べ、打刻忘れの件数や監督が修正に使った時間を運用ルールに落とし込みます。
ステップ5|就業規則・36協定と合わせる
システムの所定労働時間、休憩、休日、残業の計算方法が、就業規則と36協定の内容と一致しているかを確認します。1か月試すと「協定の上限に近い人がいる」と分かることもあります。直す必要があれば社会保険労務士に相談します。
ステップ6|全社に広げる
説明は「現場に着いたら出勤を押す」「帰るときに退勤を押す」「忘れたら当日中に監督に言う」の3つに絞り、最初の1週間は事務が毎日打刻の一覧を見て、押していない人に声をかけます。
ステップ7|月次の締めの流れを決める
締め日から給与支払日までに合わせて、「翌日に打刻漏れを確認」「2日目に監督が承認」「3日目にCSVを給与計算ソフトへ」のように日を決めます。月80時間を超える時間外・休日労働があった人には本人への通知が必要です。残業時間の一覧を毎月社長が見る時間も作ります。
よくある失敗と対処
導入がうまくいかない原因は、機能より運用の決め方にあることが多いです。事務代行の現場で見かける失敗を5つ挙げます。
| 失敗 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 打刻忘れのルールがない | 月末に修正が山積みになる | 当日中に監督へ連絡、翌日に修正申請と決める |
| 監督の負担が増える | 毎日修正と承認に追われる | 打刻は本人、監督は週1回の確認にする |
| 給与計算とつながらない | 手で打ち直す二重入力 | 導入前にCSVの形を給与ソフトと合わせる |
| 休憩時間の扱いが曖昧 | 実態と違う労働時間になる | 就業規則の休憩を設定し、現場の実態と照合 |
| 職人が嫌がる | 打刻しない人が出て形だけになる | 目的を説明し、押す回数を減らす |
「忘れた日は所定時間で入れる」という処理は、実際と違えば残業の計算を誤るので、本人に確認して直します。職人が嫌がるときは、位置情報は打刻の瞬間だけ記録されるものがほとんどだと説明し、押す回数を朝と帰りの2回に絞ると受け入れられやすくなります。
勤怠管理システムと作業日報アプリの違い
勤怠管理システムは「誰が何時間働いたか」を給与計算と法律の記録のために残す道具で、作業日報アプリは「どの現場で何をしたか」を工事の原価や進み具合のために残す道具です。役割が違うので、片方でもう片方の代わりをさせると無理が出ます。
- 勤怠管理システム: 出退勤の時刻、残業時間、休日と有給休暇、36協定の上限との比較、給与計算ソフトへの受け渡し
- 作業日報アプリ: 現場ごとの作業内容と人工、写真、材料、工事ごとの原価
- 重なる部分: 現場名と出勤日数。どちらで入力するかを決めておく
従業員10人前後の会社では、まず勤怠管理システムで労働時間の記録を整える順番が現実的です。日報アプリの選び方は現場日報アプリの記事で別に説明しています。
よくある質問
Q. 従業員5人の会社でも勤怠管理システムは必要ですか?
A. 人数にかかわらず、労働時間を客観的な方法で把握して3年間保存する義務はあります。直行直帰が多いなら、スマホ打刻のほうが義務を果たしやすいです。
Q. 一人親方や協力会社の職人も登録したほうがいいですか?
A. 雇用していない一人親方や協力会社の職人は、自社の労働時間管理の対象ではありません。人工の把握のために登録するなら、それは勤怠ではなく日報の役割です。
Q. 直行直帰の職人の労働時間は、どこからどこまでですか?
A. 厚生労働省のQ&Aでは、移動中に業務の指示を受けず自由な利用が保障されている移動時間は労働時間に当たらないとされています。一方、現場で待機している手待時間は労働時間に当たります。個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
Q. スマホを持っていない職人がいる場合はどうしますか?
A. 監督のタブレットを共用の打刻端末にする、会社でスマホを支給するなどの方法があります。本人以外が代わりに打刻する運用は、客観的な記録として弱くなります。
Q. 36協定を結んでいない会社が先にやることは何ですか?
A. 残業があるなら36協定の締結と届出が必要です。システムで実際の残業時間を1か月把握し、その実態に合わせて協定の内容を決めて届け出る順番が現実的です。
Q. 無料体験で見るべきポイントは何ですか?
A. 一番スマホに慣れていない職人が1人で打刻できるか、現場名を登録して現場別の出勤日数が出るか、使っている給与計算ソフトにCSVを取り込めるか、の3点です。
まとめ|記録を整えることが上限規制への第一歩
建設業の勤怠管理システムは、スマホ打刻と位置情報、現場ごとの集計、日給月給や手当への対応、給与計算ソフトとの連携で選び、1現場で1か月試し、就業規則と36協定に合わせてから全社に広げる順番が確実です。
まず無料で試したい会社には、人数上限ごとの定額制で36協定の超過を知らせる 勤怠クラウド と、出勤簿と交通費精算書を自動で作る Relix勤怠 が候補になります。料金や内容は変わることがあるので、最新情報は公式サイトでご確認ください。
masse(マッセ)は、一人親方・工務店・専門工事会社の事務を代行しています。勤怠の集計や給与計算の前さばき、安全書類の整理で手が回らないときは、マッセのサイトからお気軽にご相談ください。

