元請から「安全衛生責任者を届け出てください」と言われたとき、誰を書けばいいのか、その人に何の修了証が要るのか、何年前に受けたもので通るのかが分からず止まる会社は少なくありません。安全衛生責任者そのものに法律上の資格はありませんが、建設現場では「職長・安全衛生責任者教育」の修了が事実上の条件になっています。この記事では、一人親方・建築業・職人さんの事務代行を行っているマッセが、この教育の受講対象、14時間の中身、受講できる場所、修了証の扱い、おおむね5年ごとの再教育、安全書類への書き方を整理します。安全衛生責任者の役割や選任が必要な現場の基準は安全衛生責任者とは?選任が必要な現場・職務・職長との違いで説明しているので、ここでは教育に絞ります。
職長・安全衛生責任者教育とは|2つの教育を合わせた14時間

名前が長いのは、もともと別の2つの教育を建設業向けに1つにまとめたものだからです。先に全体像を押さえておくと、受講案内の「12時間」「14時間」の違いで迷わなくなります。
職長教育|労働安全衛生法第60条の法定教育(12時間)
職長教育は、労働安全衛生法第60条で事業者に義務づけられた教育です。建設業など対象の業種で、新たに職務に就くことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者に対して、事業者が行わなければなりません。科目と時間は労働安全衛生規則で決まっていて、合計12時間です。
安全衛生責任者教育|厚生労働省の通達に基づく教育(2時間)
安全衛生責任者(労働安全衛生法第16条)には法律上の資格要件がありませんが、厚生労働省は通達で、建設業の安全衛生責任者に対して安全衛生教育を行うよう求めています。その内容が「安全衛生責任者の職務等」と「統括安全衛生管理の進め方」の2科目で、合わせて2時間です。
建設業では職長と安全衛生責任者を同じ人が兼ねるので一体化した
建設現場では、下請の職長がそのまま安全衛生責任者を兼ねるのが普通です。そこで職長教育12時間に安全衛生責任者教育2時間を足した計14時間を1つの講習として実施するのが「職長・安全衛生責任者教育」です。講習案内に「職長教育(12時間)」とだけ書かれているものは、安全衛生責任者の2科目が入っていないことがあるので、建設業の人は14時間のほうを選びます。
誰が受けるのか|対象になる人・受けておくべき人
法律上の対象と、実務で受けておくべき人は少し範囲が違います。小規模な会社ほど後者が重要です。
| 立場 | 受講の位置づけ |
|---|---|
| 新たに職長になる従業員 | 法定(事業者が受けさせる義務) |
| 下請として現場に入る会社の安全衛生責任者 | 通達に基づく教育。元請の受入条件として事実上必須 |
| 一人親方本人 | 自分が職長・安全衛生責任者として届け出るなら受講が前提 |
| 社長・現場に出る経営者 | 現場で安全衛生責任者を務めるなら受講しておく |
| 現場に出ない事務員 | 不要 |
新たに職長になる人は、就く前に受ける
職長教育は「新たにその職務に就くことになった」時点で行う教育です。すでに職長として働いている人に後から受けさせるのではなく、職長にする前に受けさせるのが本来の順序です。採用や昇格の予定が見えた段階で講習日程を押さえておきます。
一人親方は「自分が届け出る人」なので受けておく
一人親方が請負で現場に入ると、再下請負通知書や作業員名簿の安全衛生責任者欄に自分の名前を書くことになります。元請は修了証の写しを求めるので、受けていないと届け出られず、現場によっては入場できません。一人親方で未受講の人は、仕事が途切れた時期に受けておくと安心です。
社内に1人しかいないと、その人が休めなくなる
安全衛生責任者は現場ごとに置く役職なので、修了者が1人だけだと、その人が休んだ日や現場が重なった日に届け出る人がいなくなります。現場を複数持つ会社は、職長クラスの全員と、現場に出る社長が受けておくと回しやすくなります。
14時間の中身|科目と時間

科目と時間は法令と通達で決まっているため、どの実施団体で受けても同じ構成です。2日間に分けて行う講習が一般的です。
| 区分 | 科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 職長教育 | 作業方法の決定及び労働者の配置 | 2時間 |
| 職長教育 | 労働者に対する指導又は監督の方法 | 2.5時間 |
| 職長教育 | 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置 | 4時間 |
| 職長教育 | 異常時等における措置 | 1.5時間 |
| 職長教育 | その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動 | 2時間 |
| 安全衛生責任者教育 | 安全衛生責任者の職務等 | 1時間 |
| 安全衛生責任者教育 | 統括安全衛生管理の進め方 | 1時間 |
| 合計 | 14時間 |
いちばん長いのは「危険性又は有害性等の調査」の4時間
リスクアセスメントの考え方と進め方に4時間が割かれています。現場の作業ごとに危険を洗い出し、優先順位を付けて対策を決める手順で、講習ではグループ演習の形をとることが多いです。KY活動や工事安全衛生計画書の記入に直接つながる内容なので、ここを理解しておくと書類の中身も書きやすくなります。リスクアセスメントの進め方は建設業のリスクアセスメントのやり方5ステップでも説明しています。
安全衛生責任者の2科目は「元請との連絡調整」が軸
安全衛生責任者の職務は、元請の統括安全衛生責任者との連絡、その連絡事項の自社関係者への伝達、作業間の連絡調整などです。2科目では、この連絡調整の役割と、元請が行う統括安全衛生管理(災害防止協議会、作業間の連絡調整、巡視など)の中で下請の安全衛生責任者が何をするかを学びます。
修了試験はなく、全時間の受講で修了になる
職長・安全衛生責任者教育は「教育」であって資格試験ではないため、合否を決める試験はありません。定められた科目を全時間受講すれば修了証が交付されます。遅刻や途中退席で時間が足りないと修了にならないので、2日間とも予定を空けておきます。
どこで受けられるか|実施団体と受講方法
講習は各地の団体が実施しています。費用は団体によって違うので、申し込み前に公式サイトで確認してください。
建設業労働災害防止協会(建災防)の各支部
建設業の労働災害防止を目的とする団体で、都道府県ごとの支部が職長・安全衛生責任者教育を定期的に開催しています。建設業向けの内容で構成されているので、建設業の人が最初に探す先として分かりやすいです。
労働基準協会・業界団体・民間の教育機関
各地の労働基準協会や建設業団体、民間の安全衛生教育機関も実施しています。開催日程が多い団体を選べば、仕事の合間に受けやすくなります。元請が自社の協力会社向けに講習を開くこともあるので、元請の安全担当に聞いてみる方法もあります。
オンライン(eラーニング)での受講
厚生労働省は、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育をインターネットなどを使って行う場合の留意事項を示しており、条件を満たせばオンラインでの受講も認められています。受講者本人が受けていることの確認、所定の時間を満たすこと、質問ができる体制などが条件です。職長教育には演習の要素があるため、団体によっては一部を対面で行う形にしているところもあります。元請によってはオンライン修了証の扱いを確認してくることがあるので、申し込み前に元請の受入基準を見ておくと安心です。
申し込みから修了証まで
一般的な流れは、団体のサイトで日程を選んで申し込み、受講料を支払い、2日間受講し、修了証を受け取る、という順です。修了証は受講した団体が発行します。人気の日程は早く埋まるので、職長になる予定が見えたら1〜2か月前には申し込んでおきます。
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修了証の扱い|有効期限・紛失・会社が変わったとき

修了証に法律上の有効期限はない
職長・安全衛生責任者教育の修了証に、法令で定められた有効期限はありません。一度修了すれば、修了の事実はなくなりません。ただし次に説明する再教育を厚生労働省が求めているため、元請によっては「修了からおおむね5年以内、または再教育の修了証」を受入条件にしていることがあります。
修了証は本人のもの。会社が変わっても使える
修了証は受講した本人に対して発行されるので、転職しても引き続き有効です。会社が受講料を負担した場合でも、修了証を会社が預かったままにして本人に渡さない、という扱いは避けてください。採用時には、前の会社で受けた修了証を持っているかを確認すると、重複して受けさせずに済みます。
紛失したら受講した団体に再発行を依頼する
修了証をなくした場合は、受講した団体に再発行を申請します。受講年と団体名が分からないと探せないので、修了証は写しを取って会社と本人の両方で保管し、グリーンサイトなどに登録してあれば登録情報からも受講歴をたどれます。
おおむね5年ごとの再教育(能力向上教育に準じた教育)
厚生労働省が求めている再教育の考え方
厚生労働省は、建設業の職長等と安全衛生責任者について、初任時の教育に加えて、おおむね5年ごと、または機械設備等に大きな変更があったときに、能力向上教育に準じた教育(再教育)を受けさせるよう事業者に求めています。法律上の義務ではなく通達に基づくものですが、元請の受入基準に組み込まれているため、実務では5年を目安に受け直す運用が広がっています。
再教育は初任時より短い
再教育は初任時の14時間をもう一度受けるのではなく、厚生労働省が示すカリキュラムに沿った短時間の講習です。労働災害防止、指導・監督の方法、リスクアセスメントなど、初任時の内容を最近の災害事例や法改正を踏まえて更新する構成になっています。時間や費用は実施団体の案内で確認してください。
修了年を一覧にして5年目を予定に入れる
再教育で困るのは「誰がいつ受けたか分からない」ことです。社内の修了者ごとに初任教育の修了年と再教育の修了年を1枚の表にし、5年目が来る人を年度初めに洗い出しておくと、元請から指摘される前に手を打てます。マッセで資格の有効期限を管理しているお客様には、この表を資格一覧と一緒に持っています。
安全書類への書き方|修了証をどこに使うか

受講して終わりではなく、修了の事実を安全書類に反映して初めて元請に伝わります。使う場所は主に3つです。
作業員名簿の「教育・資格」の欄
作業員名簿には安全衛生教育や資格を書く欄があり、職長・安全衛生責任者教育の修了を記入します。受講年月日と実施団体名を控えておくと、欄の書き方が指定されたときにすぐ書けます。名簿の欄ごとの書き方は作業員名簿の書き方と記入例をご覧ください。
再下請負通知書の「安全衛生責任者」の欄
再下請負通知書には自社の安全衛生責任者の氏名を書く欄があります。ここに書いた人の修了証の写しを元請が求めるのが通常です。氏名を書くだけでなく、写しを添付書類として一緒に出します。
グリーンサイト・Buildeeでは資格として登録する
グリーンサイトやBuildee(ビルディー)を使う現場では、作業員ごとの資格情報として職長・安全衛生責任者教育を登録し、修了証の画像を添付します。一度登録すれば次の現場でも使えるので、修了証を受け取ったらその日のうちに登録しておくと、現場ごとの書類作成が楽になります。登録のやり方はビルディーの資格登録の方法とグリーンサイトの従業員登録の方法で説明しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 職長教育(12時間)だけ受けています。安全衛生責任者になれますか?
A. 法律上は安全衛生責任者に資格要件がないので選任自体はできますが、元請は安全衛生責任者教育の2科目を含む14時間の修了証を求めるのが通常です。2科目分だけを追加で受講できる講習を実施している団体もあるので、受けた団体か近くの団体に確認してください。
Q. 10年前の修了証でも使えますか?
A. 修了証自体に有効期限はありません。ただし厚生労働省がおおむね5年ごとの再教育を求めているため、元請によっては再教育の修了証も求められます。元請の受入基準を確認し、求められるなら再教育を受けてください。
Q. 一人親方でも受講できますか?
A. できます。受講資格に雇用形態の制限はありません。一人親方が自分を安全衛生責任者として届け出るなら、受けておくことが前提になります。
Q. オンラインで受けた修了証は元請に通りますか?
A. 厚生労働省の示す条件を満たした講習であれば、修了証として有効です。ただし元請によって受入基準が異なることがあるので、申し込む前に元請の安全担当に確認しておくと確実です。
Q. 受講費用は会社が負担するものですか?
A. 職長教育は事業者が労働者に受けさせる義務のある教育なので、従業員に受けさせる場合は会社負担が基本です。受講時間も労働時間として扱います。一人親方が自分で受ける場合は自己負担です。
Q. 統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者とは別の教育ですか?
A. 別です。統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者は元請側が置く役職で、要件も教育も異なります。下請の安全衛生責任者が受けるのは、この記事の職長・安全衛生責任者教育です。元請側の役職については統括安全衛生責任者とは?をご覧ください。
まとめ|14時間を受けて、修了証を書類とシステムに載せる
職長・安全衛生責任者教育は、労働安全衛生法第60条の職長教育12時間と、通達に基づく安全衛生責任者教育2時間を合わせた14時間の講習です。新たに職長になる人、下請の安全衛生責任者になる人、自分を届け出る一人親方が対象で、建災防の支部や労働基準協会、条件を満たしたオンライン講習で受けられます。修了証に有効期限はありませんが、おおむね5年ごとの再教育が求められているため、修了年を一覧にして管理し、作業員名簿・再下請負通知書・グリーンサイト等に反映して初めて元請に伝わります。
修了証そのものは本人が取るものですが、誰がいつ受けたかの管理と、書類やシステムへの反映は事務の仕事です。マッセでは建設業の書類作成代行として、修了証や資格の有効期限管理と安全書類への反映をお手伝いしています。施工体制台帳・再下請負通知書への記載、グリーンサイト・Buildeeへの資格登録は登録代行、Greenfile.workはグリーンファイル代行で対応し、月額プランは基本プラン(作業員3名まで込み)で月額30,000円〜(税別)です。くわしくはサービス・料金をご覧ください。なお、教育の科目や再教育の考え方は通達の改正で変わることがあります。最新の内容は厚生労働省と実施団体の案内でご確認ください。
