建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?加入しないリスクや料金まで解説
近年、「建設キャリアアップシステムに加入していないと現場に入れない」という声を耳にすることが増えてきました。
国が主導して普及を進める制度であり、建設業界で働く方にとって重要なトピックとなっています。
本記事では、建設キャリアアップシステム(CCUS)の概要から仕組み、加入しない場合のリスクまでをわかりやすく解説します。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、2019年に国土交通省が導入を進めた技能者のキャリアを国の統一システムで蓄積する仕組みです。
技能者の保有資格
社会保険の加入状況
就業履歴
これらを一元的に登録・管理し、技能者が正しく評価される環境づくりを目的としています。
システムの仕組み
建設業振興基金によって2019年4月から運用が開始され、2023年3月時点で技能者約114万人、事業者約22万人が登録済み。すでに技能者の3人に1人が利用しています。
流れは次のとおりです。
登録(カード交付)
技能者情報・資格・保険加入状況を登録 → 専用カードが発行される。就業履歴の蓄積
現場入場時にカードリーダーへタッチ → 就業履歴がシステムに記録される。技能・経験の評価
蓄積データを基にカードのレベルが上がり、適正な賃金評価に反映される。事業者のPRにつながる
技能者の人数やレベルを公表することで、元請けや発注者へのアピール材料になる。
導入の背景と目的
建設キャリアアップシステム誕生の背景には、建設業界の深刻な人手不足があります。
特に若手の入職者が減少し、業界存続の危機が叫ばれる中、賃金が上がらない要因の一つが「技能者のキャリアが見えにくいこと」でした。
国が統一的にキャリアを蓄積・可視化することで、
技能に見合った賃金評価
働きやすい環境の整備
若手人材の確保
を実現する狙いがあります。
加入義務はある?
2023年現在、CCUSは任意制度であり、加入は義務ではありません。
ただし例外として、
技能実習生
特定技能外国人
を雇用する事業者は必ず加入が必要となっています。
登録しないリスク
「義務ではない」とはいえ、未加入のままでは次のようなリスクが生じます。
1. 現場に入れなくなる可能性
元請け事業者がCCUS導入を進める中、「登録業者のみ現場入場可能」というケースが今後増加。公共工事ではすでに総合評価や経審にCCUSが加点要件として追加されています。
2. 公共工事への影響
多くの自治体が、入札参加資格審査でCCUS登録を評価対象としています。今後は未加入が入札に不利になる可能性がさらに高まります。
3. 技能者・取引先から選ばれにくくなる
CCUS登録は「労働環境を整えている会社」の証明にもなります。登録していない事業者は、人材確保や取引先選定で不利になる恐れがあります。
さらに、登録からカード発行までは2か月程度かかるため、必要なときに間に合わないリスクも存在します。
建設キャリアアップシステムに登録するメリット
建設キャリアアップシステムに登録することで、技能者だけでなく事業者にも多くの利点があります。もともとは技能者のキャリアを蓄積・評価するために作られた仕組みですが、事業者にとっても次のようなメリットが期待できます。
※詳しくは「建設キャリアアップシステム(CCUS)のメリットを解説!」をご覧ください。
① 技能者・取引先へのアピール効果
システムを導入している事業者は、技能者のキャリア形成を重視している会社として評価されやすくなります。その結果、取引先からの信頼や仕事の受注、人材確保の面で優位に立てる可能性があります。
また、下請事業者の場合は、自社に所属する技能者の資格やキャリアを元請事業者に分かりやすく示すことができ、選ばれやすい存在となります。
② 業務効率化・コンプライアンス強化
カードによる勤怠管理や、スキルの見える化による採用効率化、完工後の入退場データ確認などにより、事務作業の簡素化や法令順守の徹底が可能になります。
特に元請事業者にとっては、下請事業者や技能者の社会保険加入状況を容易に確認でき、現場管理の効率化にもつながります。
さらに、建退共とCCUSを連携させることで、建退共の電子申請を簡単に行える仕組みも整っており、事務負担の軽減が期待できます。
※詳細は「建退共の電子申請を建設キャリアアップシステムで楽に行う方法」をご覧ください。
建設キャリアアップシステムの利用にかかる費用
CCUSを利用する際の費用は「登録時」と「運用時」に分けられます。
※詳しくは「建設キャリアアップシステムの利用料金は?下請は無料?」をご確認ください。
登録時の費用
利用開始には「事業者登録」と「技能者登録」が必要です。1人親方の場合も両方の登録が必要です。
事業者登録手数料:資本金規模に応じて無料~240万円まで幅があります(例:資本金500万円未満=6,000円)。
技能者登録手数料:登録区分により2,500円(簡略型)または4,900円(詳細型)。詳細型では資格や健康診断情報まで登録可能です。
運用時の費用
ID利用料:事業者ごとに発行される管理者IDは、1つにつき年間11,400円が必要です。
現場利用料(元請のみ):技能者が現場入場時にカードをタッチするごとに10円。例えば、50人が10日間出入りする現場では合計5,000円となります。
CCUSの利用手順
事前登録
事業者情報を登録 → 所属技能者を登録 → 技能者ごとにカード交付。
※申請は原則Web対応で、完了まで約1か月程度。グリーンサイトと連携することも可能。現場運用
元請事業者が現場情報をシステムに登録し、下請と協力して施工体制を整備。技能者の登録がないと就業履歴が反映されないため注意が必要。就業履歴の蓄積
現場に設置されたカードリーダーにカードをタッチすることで、就業履歴が自動的に蓄積・確認可能。
登録を迷っている方へ
登録を見送るメリットは費用削減のみですが、デメリットやリスクの方が大きいのが実情です。
特に公共工事では利用がほぼ必須化しており、将来的には民間工事にも波及する可能性が高いです。カード発行まで2~3か月かかるため、早めの登録がおすすめです。
時間が確保できない場合は、当サイト運営の 長﨑行政書士法人による登録代行サービス をご活用いただければ、手間をかけずに登録を進めることも可能です。
まとめ
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、
技能者のキャリアを正当に評価
労働環境の改善
公共工事や受注機会への影響
といった面で今後ますます重要性が高まる制度です。
現状では任意制度ですが、加入しないことは「現場に入れない」「入札で不利になる」などのリスクを伴います。
早めに登録を進め、制度をうまく活用していくことが、これからの建設業界で生き残るために欠かせないと言えるでしょう。