建設業は「事務所労災」を忘れずに!
建設業で人を雇う場合、必ず必要になるのが労災保険への加入です。
まず「保険関係成立届」を労働基準監督署へ提出し、あわせて年度末までの概算保険料を「概算保険料申告書」に記載して申告・納付します。
さらに、週20時間以上勤務する従業員を雇う場合は雇用保険の加入が必要です。
そのため「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険資格取得届」をハローワークへ提出します。
一元適用と二元適用
労災保険と雇用保険の取り扱いは、事業の種類によって異なります。
一元適用事業:両保険料をまとめて計算(製造業やサービス業など)
二元適用事業:労災と雇用保険を別々に計算(建設業や農林漁業など)
建設業は二元適用事業に分類されます。
建設業の保険料計算方法
通常の事業では「従業員の給与総額 × 保険料率」で保険料を算出します。
しかし建設業では各工事現場の請負金額の総額 × 労災保険料率で計算します。
現場は危険度が高いため、事務職に比べて保険料率も高く設定されています。
有期事業の一括(現場労災)
建設工事は工事ごとに労災保険が成立しますが、現場ごとに処理すると事務作業が膨大になります。
そこで、複数の工事をまとめて管理できる「有期事業の一括」、いわゆる現場労災の仕組みが導入されています。
事務所労災の必要性
現場労災はあくまで現場用。
そのため、事務所での業務中や、自宅から事務所までの通勤途中で発生した災害には適用されません。
この場合に必要なのが事務所労災です。
事務所労災は「保険関係成立届」を別途提出し、給与総額を基準に保険料を計算します。
事務員の業務に備えるための仕組みと考えてください。
年度更新は3種類の申告が必要
労災・雇用保険料は4月(または成立月)から翌年3月までを対象に概算で納め、年度末に確定精算を行います。これを年度更新と呼びます。
一般の一元適用事業:申告書は1枚
建設業(二元適用):
現場労災 → 請負金額で計算
雇用保険 → 現場+事務所の給与総額で計算
事務所労災 → 事務員の給与総額で計算
このため、建設業では3種類の申告書と3つの労働保険番号が必要となります。
まとめ
建設業の年度更新が煩雑なのは、
現場労災と事務所労災の区分がある
請負金額を工事ごとに集計する必要がある
といった理由からです。
特に「事務所労災」を見落としている会社も少なくありません。
経営者が自分で管理するのは大変ですが、忘れずに加入しておきましょう。
また、社長自身は労災保険の対象外ですが、「事務組合」に事務処理を委託すれば特別加入制度を利用できます。
労災や雇用保険については社会保険労務士が専門なので、事務組合を通じての加入もおすすめです。