建設キャリアアップシステムについて徹底解説
「建設キャリアアップシステム」という言葉をご存じでしょうか。
「名前は聞いたことがあるけれど、具体的な内容はよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。実は、「建設キャリアアップシステム」は、技能者だけでなく、事業者にも多大な利益をもたらす仕組みです。
建設キャリアアップシステムは一体どのようなものなのか、そのメリットや料金についても詳しくご説明いたします。ぜひ最後までご覧いただき、参考にしてみてください。
◆建設キャリアアップシステムとは
建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System, CCUS)は、国土交通省が推進している取り組みで、建設業に従事する技能者の経験や職歴、社会保険の加入状況などをデータベースに登録・蓄積する仕組みです。
このシステムの目的は、建設業界における技能者の経験や実績を明確にすることで、彼らの能力を適正に評価することにあります。技能者の能力が明確になることで、事業者は適切な評価を行いやすくなります。これにより、技能者の処遇改善が促進されます。
また、処遇改善によって、若年層に建設業界が魅力的な職業であることを認識させ、将来的な技能者の確保につながると期待されています。
「建設キャリアアップシステム」は、一般財団法人建設業振興基金が運営しており、2019年4月から本格的に導入されています。現時点では任意加入ですが、2020年1月以降、外国人実習生を受け入れる場合には必須となっていますので、留意が必要です。
◆システムの登録方法
建設キャリアアップシステムには、主に4つの情報が登録されます。
1. 技能者情報(労働者)
2. 事業者情報(企業)
3. 現場情報
4. 就業履歴情報
システムを利用するには、以下の手順で登録が必要です。
1. 事業者が事業所情報をシステムに登録
事業者は、技能者が所属する事業所の情報をシステムに登録します。
2. 技能者が自身の情報をシステムに登録
技能者は、自身の情報をシステムに登録し、事業者が登録した情報と紐づけます。登録はインターネット、郵送、または窓口で行います。
3. IDとキャリアアップカードの発行
情報の登録が完了すると、技能者にはIDとキャリアアップカードが、事業者にはIDがそれぞれ発行されます。
4. 元請業者の場合は現場情報をシステムに登録
元請業者は、現場情報をシステムに登録します。
5. 事業者が現場にICカードリーダーを設置
元請業者は、現場にICカードリーダーを設置します。
6. 技能者が現場に入る際にICカードリーダーにICカードをタッチ
技能者は、現場に入る際にICカードリーダーにICカードをタッチします。これにより、就業履歴情報がシステムに蓄積されます。
◆建設キャリアアップシステムを利用するメリットは?
技能者のメリット
技能者にとっては、主に3つの利点があります。
1. 処遇改善
建設キャリアアップシステムは技能者の処遇改善を目的としており、そのための仕組みです。技能レベルに基づいた賃金アップや処遇の改善が期待できます。
2. キャリアの証明
このシステムを利用することで、技能者は自身のキャリアを簡単に証明できます。これはキャリアアップや転職活動において有利に働きます。
3. 建設業退職金共済制度の利用
建設業退職金共済制度(建退共)において、技能者が掛け金を確実に充当できるようになります。これは、将来の安定した退職のために重要な要素です。
建設事業者のメリット
建設事業者側にも多くのメリットがあります。
1. 出面管理の効率化
建設キャリアアップシステムにより、出面管理が効率的かつ正確に行えます。これは賃金や代金支払いの根拠となります。
2. 入札加点の向上
技能者のキャリアが見える化されるため、入札時に具体的なメリットをアピールできます。
3. 社会保険加入状況等の確認の効率化
事業者は、技能者の社会保険加入状況や保有資格などを容易に確認できます。これにより、業務の効率化が図れます。
4. 事務作業の効率化への期待
ICカードによる勤怠管理やキャリアの見える化により、事業者の事務作業が効率化されます。また、退職金制度との連動により、退職金に関わる業務も効率化されるでしょう。
◆建設キャリアアップシステムを利用するデメリットは?
建設キャリアアップシステムの欠点は、利用料金が必要ということです。
以下の登録料金と利用料金が必要ですので、ご注意ください。
事業者の利用料金
事業者は登録料、管理者ID利用料、現場利用料(元請)の3つの費用がかかります。
1. 登録料金:
事業者登録料は規模によって異なります。個人事業主の場合、6,000円です。法人は資本金に応じて6,000円~240万円です。
2. 管理者ID利用料:
毎年、事業者には管理者IDが発行されます。一人親方の場合、年間2,400円が必要です。
3. 現場利用料(元請):
元請業者は現場利用料を支払います。利用料は就業者数と工期に応じて異なります。一日当たりの就業者数×10円が利用料となります。
技能者の利用料金
技能者は登録料を支払う必要があります。インターネット申請と認定登録機関申請があります。登録料は以下の通りです。
1. インターネット申請:
– 簡易型登録料:2,500円
– 詳細型登録料:4,900円
2. 認定登録機関申請:
– 詳細型登録料:4,900円
登録したカードが期限内に紛失や破損した場合、再発行手数料は1,000円です。また、60歳以上の技能者にはインターネット申請の登録料が割引されます。
まとめ
今回は建設キャリアアップシステムについて詳しくご説明しました。
このシステムは建設業界で働く技能者だけでなく、事業者にも多くのメリットをもたらします。登録料や利用料は必要ですが、そのメリットは大きいです。導入を検討する価値があるでしょう。